Vol.1 — No.4 クリームチームマーケティング合同会社化粧品・健康食品D2C 意思決定のカウンターパート

化粧品・健康食品 ニュースレビュー

Cosmetics & Health-Food News Review
何紙も見て回らなくていい。今週の大事なニュースだけを、やさしく解説。
2026年7月13日(月)発行 収録 7/6〜7/9 化粧品4・健康食品3
先週号のテーマは「買ってもらうより、信じて続けてもらう」でした。今週は成分ではなく、場面で差をつける。美容医療の話題成分を2,480円の自宅ケアに落とす化粧品、洗顔中の摩擦という体験を特許で囲う技術、サプリの飲みやすさをAIで設計する大手、そして生鮮きのこが「肌のうるおい」を語り始めた機能性表示。並べると、差がつく場所が成分の強さから「いつ・どこで・どう続けるか」へ移っているのが見えます。
化粧品

DHC「両輪戦略」。新商品の購入者の約半分が新規・休眠だった

DHCが掲げる、既存顧客の活性化と新規獲得を同時に進める「両輪のマーケティング戦略」が化粧品事業で成果を上げている。基幹ブランド「オリーブ」は昨年10月に初のリニューアルで「オリーブウェルシリーズ」へ刷新し、新製品期間の売上は二桁成長。並行して今年2月に投入した新規向けの「DHCクリスタルスキン 美容液 ローション」は、購入者の約半分を「初めてDHCの化粧水を買った人」と休眠顧客が占めた。マーケティング統括ユニットの髙橋佐和子ユニットマネージャーが語った。出典:日本ネット経済新聞(7.6・要無料登録)

既存向けとは全く異なる思想で作り上げた結果、狙い通りにいった。驚くべきことに、購入者の約半分を「初めてDHCの化粧水を買った方」、あるいは「しばらくローションをお休みしていた休眠顧客」が占めた。— 日本ネット経済新聞(DHC 髙橋佐和子ユニットマネージャー)
山口尚大山口の視点クリームチームマーケティング代表

注目すべきは、新商品を2本に分け、役割をはっきり分けた点です。1本目のリニューアルは守り。長年の愛用者が「これこそ私の化粧品」と安心できるテクスチャーを残したまま中身を新しくしました。2本目は攻め。既存とは全く別の思想で作った入口商品で、買ったのは新規と休眠でした。中小D2Cがよくやる失敗は、新商品を1本だけ作って既存にも新規にも当てにいき、結局どちらにも刺さらないことです。今日からできるのは2つ。既存商品をリニューアルするときは「今の定期顧客が離れない条件」を先に文字にしてから中身を変えること。そして新規向けは既存の延長で作らず、入口専用として設計すること。休眠の掘り起こしは新規獲得より安く済みます。眠っているリストに、新しい入口商品を1本当ててみてください。

ポイント:新商品は「既存を守る1本」と「新規・休眠の入口になる1本」に役割を分ける。1本で両方を狙うと、どちらにも届かない。

化粧品

化粧品通販売上高ランキング、106社で7418億円。前年の91社から掲載社数が増えた

日本流通産業新聞がまとめた2026年版「通信販売化粧品売上高ランキング」で、ランキング化した106社の合計売上高が7418億5600万円となった。調査対象期間は2025年4月から2026年3月の間に迎えた決算期の売上高。前年版はTOP91だったため、ランキングに載る規模の通販化粧品事業者が15社ぶん増えた計算になる。出典:日本ネット経済新聞(7.7・要無料登録)

2026年版「通信販売化粧品売上高ランキング」では、ランキング化した106社の合計売上高が7418億5600万円となった。— 日本ネット経済新聞
山口尚大山口の視点クリームチームマーケティング代表

合計額より、掲載社数が91社から106社に増えたことのほうが重要です。市場が伸びたというより、ランキングに載る規模まで来た通販化粧品ブランドが増えている。つまり同じ棚の取り合いをする相手が増えたということです。ここでやりがちなのが、上位企業の施策をそのまま真似ることです。テレビCM、大型タレント、成分の物量。あれは資本があるから成立します。ランキングの正しい使い方は、自社と同じ売上規模の帯を見つけて、そこにいる会社が去年から何%伸びたか、何を変えたかを見ることです。土台(顧客像とUSPの言語化)が固まっていない状態で上位の施策だけ真似ると、広告費だけが溶けます。順番でいえば、これは「集客を増やす前に、自分がどの帯で誰に選ばれるかを決める」話です。

ポイント:ランキングは競合の物真似リストではなく、自社の規模帯を確かめる地図として使う。上位の施策は資本があって成立している。

化粧品

美容医療の話題成分グルタチオンを2,480円の美容液に。ネット専売D-RAYの割り切り

オーガランドが展開するネット専売コスメ「D-RAY」が、グルタチオンを10,000ppm配合した美容液を7月1日から順次発売。30mlで税込2,480円。楽天市場、Yahoo!ショッピング、au PAY マーケット、Qoo10で販売する。グルタチオン特有のにおいには独自の脱酸素製法で配慮した。リリースには「※透明感:うるおいによる肌印象」「本文の成分に関する記載は、うるおい・整肌など化粧品の効能効果の範囲内の内容です」と注記がある。出典:健康美容EXPOニュース(7.8・無料)

どれだけ魅力的な成分でも、毎日続けられなければ意味がない。そんな考えから、初めての方でも取り入れやすく、心地よく使える美容液を目指しました。— 健康美容EXPOニュース(オーガランド発表)
山口尚大山口の視点クリームチームマーケティング代表

成分の話に見えて、実は需要の穴を突いた設計です。美容医療に興味はあるが、費用と通い続けるハードルで踏み出せない人。そこに2,480円の自宅ケアを置いた。価格で殴りにいったのではなく、「まず家から始めたい」という場面に商品を置いています。もう一つ、リリースの書き方を見てください。医療現場で話題の成分を扱いながら、表現は「乾燥によるくすみ」「うるおいによる肌印象」に翻訳し、化粧品の効能効果の範囲内であると自ら明記しています。薬機法で詰むのは、成分が強いからではありません。成分の強さを、そのまま効果の言葉にしてしまうからです。強い成分を扱うなら、この注記の作法をLPと広告文にも同じ強さで通す。そして「においを消して続けやすくした」という一点も、続けてもらう設計そのものです。

ポイント:強い成分ほど、表現は生活の言葉に翻訳して薬機法の範囲に収める。売っているのは成分ではなく「まず自宅から始められる」という場面。

化粧品

ナリス化粧品、「摩擦を減らす泡」の処方で特許登録。守りにいったのは体験

ナリス化粧品が、高い弾力と持続性を両立した泡をつくる洗顔料の処方で特許登録に至った(特許登録番号7869627、登録日2026年5月26日、名称「洗浄用化粧料」)。脂肪酸組成の最適化、コアセルベーションの新技術、そして粘土鉱物とカチオン性高分子の複合体を泡膜に並べるピッカリング技術を組み合わせ、アルファベットのS字を保ったまま自立するほどの泡を実現した。狙いは、泡で指と肌の接触を防ぎ、洗顔時の摩擦刺激を減らすこと。出典:健康美容EXPOニュース(7.9・無料)

近年の洗顔料には汚れを落とすことに加えて、泡によって指と肌の接触を防ぎ、洗顔時の摩擦刺激を軽減することが求められています。— 健康美容EXPOニュース(ナリス化粧品発表)
山口尚大山口の視点クリームチームマーケティング代表

特許の中身より、何を守りにいったかを見てください。「もっとよく落ちる」ではなく「摩擦を減らす泡」です。つまり、洗顔している数十秒の体験を技術で作り、それを特許で囲った。効果効能で差別化できない化粧品において、これは正攻法です。中小は特許まで取れなくても、考え方はそのまま使えます。自社商品を使っている数十秒のうち、どこが他社と違うのかを1つだけ決める。泡の弾力でも、伸びでも、すすぎの速さでも、香りが残らないことでもいい。決めたら、商品名・LPの見出し・使い方の説明・同梱物の全部でその1点を繰り返す。ヒントはレビューにあります。お客様が褒めている一文は、たいてい成分ではなく使用感の話です。成分表で並ぶと横並びに見えるものが、体験の言葉にすると差がつきます。

ポイント:差別化は「よく効く」ではなく「使っている数十秒がどう違うか」に置く。その1点を商品名からLPまで通す。レビューの褒め言葉がヒント。

健康食品

キリンとファンケル、サプリの「錠剤設計AI」を共同開発。AIが最適化したのは飲みやすさ

キリンホールディングスとファンケルが、蓄積した製剤データを使って錠剤の大きさ・硬さ・飲みやすさを検討する「錠剤設計AI」を共同開発した。従来は熟練研究者の経験や勘、多数の試作に依存していた錠剤設計を、データ駆動型に置き換える。数千から数万通りの処方条件の組み合わせをAIが高速に予測・比較し、開発期間の短縮と原料ロス削減につながるという。成果は2026年4月に国際学術誌「Pharmaceutics」に掲載された。出典:キリンホールディングス プレスリリース(PR TIMES・7.9・無料)

開発したAIは、過去の研究や製造データを学習し、サプリメントにおける錠剤の「飲み込みやすさ」、「輸送中に割れにくい硬さ」、「体内での溶けやすさ」といった複数の要素を予測できるようにしました。— キリンホールディングス プレスリリース
山口尚大山口の視点クリームチームマーケティング代表

大手のR&Dの話に見えますが、中小に効く読み筋が2つあります。1つは、AIが置き換えたのが「熟練者の勘」であって、顧客との関係ではないこと。中小もAIは怖がらずに取り入れて、その上に人の判断と関係性を重ねる。ここは今後も変わりません。もう1つ、こちらのほうが本質です。大手がAIまで投じて最適化した先が「飲み込みやすさ」だった。効き目ではなく、続けやすさに投資しているのです。サプリの定期が止まる理由は、効果を感じないことだけではありません。粒が大きい、数が多い、においが気になる、といった小さな面倒の積み重ねです。中小がAIで錠剤を設計するのは難しくても、OEM先への発注要件に「粒の大きさ」「1日の粒数」「におい」を数字と言葉で書き込むことはできます。そして解約理由を、効果の実感だけでなく「続けにくさ」の軸でもう一度聞き直す。広告を足す前に、製品そのものの続けやすさを見る話です。

ポイント:大手がAIで最適化したのは効き目でなく飲みやすさ。LTVは製剤段階から始まる。OEM発注要件に粒の大きさ・粒数・においを明記し、解約理由を「続けにくさ」で聞き直す。

健康食品

カゴメ、3つの機能性を載せたトマトジュース。狙いは「食事の時に飲む」という場面

カゴメが機能性表示食品「カゴメトマトジューストリプルケア 食塩無添加」を7月21日に発売する(届出番号K746)。トマト由来食物繊維に食後の血糖値上昇を抑える機能と食後血中中性脂肪の上昇を抑える機能、GABAに血圧が高めの方の血圧を下げる機能が報告されており、3つの機能性を1本に表示した。265gのPETボトルで店頭想定価格は180円前後。食事と一緒に飲まれるPETボトル飲料の特性を活かし、1日1本を食事の際に飲む設計にした。出典:健康美容EXPOニュース(7.7・無料)

食事と一緒に飲まれることが多いPETボトル飲料の特性を活かして、食事シーンに適した機能性トマトジュースを開発しました。— 健康美容EXPOニュース(カゴメ発表)
山口尚大山口の視点クリームチームマーケティング代表

3つ載せたことより、選んだ3つが全部「食事に関係する機能」だという点を見てください。血糖値、中性脂肪、血圧。どれも食事のあとに気になる話です。そこに、食事中に飲むPETボトルという形を合わせた。機能性表示食品の届出表示は、同じ関与成分を使えば競合とほぼ同じ文言になります。つまり届出表示では差がつきません。差がつくのは、その機能を生活のどの場面に置くかです。ここは自社で決められます。商品名、パッケージ、同梱物、ステップメールの全部で「いつ飲むか」を同じ言葉で繰り返せば、お客様の生活の側に続ける理由ができる。ただし表現は届け出た範囲を超えないこと。3つ載せたからといって「これ1本で健康」といった言い方をすれば、景品表示法の指摘リスクになります。攻めるのは場面、守るのは表現です。

ポイント:届出表示は競合と横並びになる。差がつくのは「いつ・どの場面で使うか」。場面で攻め、表現は届出範囲で守る。

健康食品

ホクトの生鮮きのこが機能性表示食品に。スーパーの食材が「肌のうるおい」を語り始めた

ホクトが「霜降りひらたけ」を機能性表示食品として全国販売する(届出番号K346)。同社の生鮮きのこで初。機能性関与成分はエルゴチオネインで、届出表示は「エルゴチオネインを25mg/日摂取すると、肌が乾燥しがちな方の肌のうるおいを保つことが報告されています」。2018年から基礎研究を続け、肌が乾燥しがちな人を対象にした臨床試験で肌の水分量が維持されることを確認したとしている。出典:健康美容EXPOニュース(7.6・無料)

本品にはエルゴチオネインが含まれます。エルゴチオネインを25mg/日摂取すると、肌が乾燥しがちな方の肌のうるおいを保つことが報告されています。— 健康美容EXPOニュース(届出表示)
山口尚大山口の視点クリームチームマーケティング代表

健康食品D2Cにとっては、静かですが重い一報です。サプリではなく、スーパーで買う生鮮食品が、届出表示で「肌のうるおい」を語れるようになった。同じ悩みを、より安く、食卓という日常の中で解決すると言い始めたわけです。競合はもう同カテゴリのサプリだけではありません。ここで「サプリは含有量が違う」と技術論で反論しても勝てません。やるべきは、サプリにしか作れない価値を前に出すことです。毎日同じ量を確実に、決まったタイミングで、飲み忘れないように届ける。この「確実さと継続の伴走」がサプリの本体価値で、食材にはできない部分です。立ち位置を「食事から摂れるならそれが一番。足りない分を、毎日同じ量で確実に」と言い直すほうが、正直で強い。なお届出表示は「肌が乾燥しがちな方の肌のうるおいを保つ」までです。美肌や美白へ言い換えた瞬間に範囲外になります。

ポイント:競合は食卓から来る。サプリの価値は成分量ではなく「毎日同じ量を確実に続けさせる伴走」。表現は届出範囲を1ミリも超えない。

本紙について 化粧品・健康食品の大事なニュースを毎週1ページにまとめ、むずかしい言葉をかみくだいて解説しています。
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